台風の多い時期に天候の無事と豊作を祈願して行われるのが琴路神社の通夜です。市内の16~17地区から琴路神社に集まり、浮立の奉納が行われます。
琴路神社に到着する時刻は各地区ごとに異なります。17時過ぎになると、一番手の西牟田地区が到着しました。整列して並び、笛を吹きながら本殿に向かって歩いていきます。
本殿の前で手を合わせたら、浮立の奉納が始まります。笛や太鼓の音色が境内に響きます。上の写真の中央に写っているのは「鉦浮立(かねぶりゅう)」というもので、吊るされた鉦を木づちで叩いて音を出します。
演奏の主役は地元の子供たちです。各地区の小中学生が真剣な表情で太鼓を叩いています。どの地区も素晴らしい演奏に仕上がっており、事前にかなり練習してきたことが伝わります。
神社に対して笛や太鼓を鳴らして祈願することを鹿島市では「浮立を奉納する」と表現します。本殿に向かって楽器を演奏している姿は鹿島市ならではの光景です。
見所の一つは、「子供獅子浮立(こどもししぶりゅう)」という新町地区の獅子舞です。親から子へと先祖代々受け継がれてきた踊りを子供たちが一生懸命に披露しています。獅子舞の横に大人が付き添い、声をかけて鼓舞している姿が印象的でした。
本殿の前で行われる浮立の奉納は、一つの地区あたりおよそ15分から30分です。地区によって使用する楽器や演奏者の年齢などが異なり、曲の聞こえ方も変わってくるので、長時間眺めていても飽きません。ケーブルテレビの取材の他に、カメラを持った観客も大勢来ていました。
その後も続々と法被(はっぴ)を着た人たちが琴路神社を目指して集まってきます。
到着した順番に本殿の前で浮立の奉納を行うのですが、19時に近くなるとそれを待つ人たちで境内がいっぱいになります。待っている間も笛を鳴らしたり、太鼓を叩いたりするので、複数の地区の演奏が混ざります。そのにぎやかな感じが夏祭りらしさをかもし出し、とても心地よい音色に聞こえます。
法被の背中に書かれている「一声浮立(いっせいぶりゅう)」とは、佐賀県の有明海沿岸に多く伝えられているもので、笛や大小の太鼓を組み合わせて鳴らします。上の写真は、本殿の前で子供と大人が一緒になって一声浮立を披露している様子です。
19時を過ぎたあたりに日が沈み、境内は暗くなっていきます。それでも浮立の奉納が終わることはなく、一生懸命に演奏を続けます。
昔は一晩中行われていた通夜ですが、現在は21時から22時あたりで終わります。夜になると提灯の灯りが幻想的に見えて美しく、夕方の演奏とはまた違った感動を与えてくれます。