救世神社秋祭りの体験レポート

鹿島市の名物と言えば、鬼の面をつけて勇壮に踊る面浮立(めんぶりゅう)があります。能古見(のごみ)の浅浦(あさうら)地区にある救世(くせ)神社の秋祭りでは、鹿島市の重要無形民俗文化財に指定されている「浅浦の面浮立」が奉納されます。

朝の8時30分頃から上浅浦の古湯溜池(ふるゆためいけ)で面浮立が披露されます。その後は地区内をまわり、昼には救世神社、夕方には元光寺(げんこうじ)で奉納が行われます。

古湯溜池は山の中にあります。上の写真のような山道を3分ほど歩くと到着します。以下に古湯溜池の地図を掲載しておきます。

上の写真が古湯溜池です。周囲には人工の建物が一切なく、あるのは緑の木々と池だけです。鹿島市で面浮立を見られるお祭りはいくつかありますが、これだけ大自然に囲まれた環境で行われるのは珍しいです。

古湯溜池の隣には上の写真のような堤防があり、この上で奉納が行われます。8時過ぎ頃になると、続々とカメラマンが集まってきます。このように中心市街地を離れた田舎で行われるお祭りは、地元の人しか来ないイメージがありますが、浅浦の面浮立は違います。毎年遠い県外から訪れる人がいるほど、人気の撮影スポットになっています。

笛の音と共に面浮立が始まりました。見学者は堤防の先に集まり、「かけうち」と呼ばれる鬼の面をつけた人達は正面から踊りながら近づいてきます。黒い顔に尖った歯、口からは赤く長い舌がのびて、近くから見ると一段と恐ろしく感じます。面浮立は所作などによっていくつかの系統に大別されますが、浅浦の面浮立は重心を落とし、力強い踊りを主体とする「母ヶ浦(ほうがうら)の面浮立」系統に属すると言われています。

浅浦の面浮立が人気撮影スポットになっている理由の一つに彼岸花があります。堤防の両脇に沿って赤い彼岸花が植えられ、ちょうど秋祭りの時期に見頃を迎えます。

彼岸花と面浮立を同時に写真に収められるのは救世神社の秋祭りだけです。堤防の上は狭いため、ベストショットを狙う人は早めに場所取りをした方が良いかもしれません。

浅浦の面浮立で演じられる演目は全部で14曲で、他の地域に伝わる面浮立に比べて曲目が多くなっています。堤防の上では、およそ30分の時間踊りが続きます。

古湯溜池の堤防だけではなく、救世神社の周辺一帯は至る所に彼岸花が咲いています。この地域は茅葺屋根の古い民家も多く、田舎ならではの原風景が広がっています。面浮立の見学が終わって時間がある人は、少し歩いて町並みを眺めてみるのもおすすめです。

夕方頃に奉納が行われる元光寺は、江戸時代に浅浦一帯を領有していた嬉野氏の菩提寺(ぼだいじ:先祖代々の墓をおく寺)です。元光寺の裏山にある嬉野一族の墓地には、上の写真のような人形(ひとがた)の墓石が5体置かれており、生前の風貌をしのばせています。人形の墓石は全国的にも事例が少なく、非常に希少価値が高くなっています。

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