鹿島市で年内最後の一大イベントが祐徳稲荷神社で行われる「お火たき」です。境内に設けられた「お山」に点火された火柱にあたると、病気を癒し、罪やけがれが清められると言われています。この記事では、過去のお火たきの様子について紹介します。
午前中は新嘗祭の神事
夜のお火たきの前に、午前中には祐徳稲荷神社の本殿で「新嘗祭(にいなめさい)」という秋の収穫に感謝する神事が行われます。
本殿には大勢の参拝者が集まり、厳粛な雰囲気の中で、御扉の開閉、祝詞奏上、巫女さんによる八乙女の舞、雅楽の演奏、玉串拝礼などが行われます。
夜からお火たき
例年、夜の8時頃からお火たきが始まります。それよりも早い時間帯から祐徳稲荷神社に一番近い駐車場は満車になる可能性があり、その場合は門前商店街の下にある駐車場を使ってそこから歩きます。通常は夕方頃に門前商店街のお店は閉まりますが、この日は夜まで開いているお店が多く、屋台も出るので楽しめます。
この日に限らず、祐徳稲荷神社は夜になるとライトアップされ、幻想的に浮かび上がった社殿が昼間とは違う美しさを感じさせます。
お火たきは、境内に用意された「お山」という場所に点火されます。お山の中央には神聖な場所を示す「紙垂(しで)」のついた長い竹が立っており、それに向かって長い木がいくつも立てかけてあります。開始1時間前の7時頃から、お山の周囲には人が集まってきました。毎年お火たきは大勢の参拝者が訪れるため、より近くで火に当たりたい、写真を撮影したいという人は、早めに行って場所取りをする必要があります。
8時頃になると、境内の照明が消えて真っ暗になります。その後、神社の下り参道から御神前の浄火がともされた松明を持った神主が降りてきます。
そして、いよいよ松明の浄火をお山の根元の方に点火します。火がつくと参拝者からは歓声が上がりました。
「バチン」という強烈な竹の破裂音と共に、瞬時に火は燃え広がっていきます。よく見ると、お札など色々なものが燃えています。地元の人の話によると、昔は柵がなくて近寄って古いお守りやお札を火に入れたり、遠くから投げ入れる人もいたそうです。中には神棚を火に入れるなど自由にやっていたそうですが、現在は安全のために柵が用意され、参拝者が直接火に投げ入れることは禁止されています。
その代わりに、お火たきの日には境内の入り口に「古札納所(こふだおさめしょ)」が用意されていますので、ここに納めてください。
数分でお山の最上部まで燃え広がりました。圧倒的な迫力の火柱を前に、参拝者は静かに見上げています。竹が燃えて割れる音、火柱の大きさと熱さ、それを見守る大勢の参拝者など、現場に行かなければ分からない独特な雰囲気があります。
火柱の高さは何と十数メートルにまで到達します。山の斜面にある後ろの本殿まで届きそうな高さまで燃えています。
近くで見ていると想像以上に熱いです。特に顔が熱く、上の写真のように最前列で見ていた人達は顔をふせたり、後ろを向いたりしていました。
風向きによっては前列の人達に火の粉が飛んできて驚きます。もちろん、火事にならないように消防団の人が待機しています。
必ずしもお山の周りから見学する必要はなく、上空から見ても幻想的で美しいです。
会場では参拝者に無料で甘酒がふるまわれます。この甘酒は、春の「お田植祭」で田植えし、秋の「抜穂祭」で収穫した新米で造られたものです。甘酒はたくさん用意されているので、容器を持っていけばそこに甘酒を入れて持ち帰ることができます。容器がない人は、コップに入れたものをその場で飲めます。
門前商店街でも楽しいイベントを開催
祐徳稲荷神社の参道にある門前商店街では、お火たきに合わせて「YOU・得!ガラポン抽選会」というイベントを開催していました。門前商店街で一定金額を購入するごとにクジを引けて、佐賀牛などの賞品をもらえました。
終わりに
一年を締めくくるイベントがこのお火たきです。一年の最後に身を清めるための神聖な行事であり、それと同時に初めて見る人にとっては興味深いお祭りでもあると思います。非日常的な迫力のある写真を撮影できるので、カメラ好きの人にも良いイベントです。これほど巨大な火柱を前にする機会は日常的になく、あっという間に時間が経っていました。できる限り毎年欠かさずに行きたいと思える素敵なイベントでした。