佐賀県鹿島市には「面浮立(めんぶりゅう)」と呼ばれる鬼の面をつけて踊る民俗芸能が多く残されています。面浮立は鹿島市の様々なイベントで披露され、県外も含めて多数のカメラマンやメディアが撮影に訪れます。この記事では、鹿島市で面浮立を見られる主なイベントを紹介しています。
面浮立とは
面浮立は、太鼓や鉦(かね)の音と共に鬼の面をつけて踊る民俗芸能です。鹿島市および佐賀県を代表する民俗芸能で、佐賀県の重要文化財に指定されています。
鬼の面には「シャグマ(ヤク)」という動物の長い毛がつき、独特の力強い踊りで頭を振り乱すたびにシャグマの毛がなびきます。お腹のあたりには小太鼓をつるし、それを叩きながら踊ります。
面浮立は市内各地のお祭りで披露されていますが、少子高齢化などが原因で後継者が減っています。そのため、各地区では面浮立の保存会を結成して後世まで残せるように努力を続けています。
大人から子供へと受け継がれている面浮立。3歳から練習を始めたという子供もおり、面浮立を踊っている団体の中に子供の姿を見かけることも珍しくありません。
面浮立を見られる鹿島市のイベント
地元のお祭りで披露される面浮立は車がないと見に行くのが難しいこともありますが、バスを使って気軽に行けるイベントもあります。ここからは、鹿島市で面浮立を見られる主なイベントを紹介します。
初午祭 (2月)
2月最初の午の日に祐徳稲荷神社で行われるお祭りです。面浮立は神社の境内で披露され、荘厳な楼門や社殿を背景に勇ましく踊ります。祐徳稲荷神社は肥前鹿島駅からバスで約10分なので、市外から電車で来ても行きやすいです。
境内の他には、祐徳稲荷神社の門前商店街でも踊りをしながら練り歩きます。
肥前浜宿花と酒まつり (3月)
鹿島市で最大のイベントである鹿島酒蔵ツーリズムと同時開催される肥前浜宿花と酒まつりでは、ステージや肥前浜宿の酒蔵通りで鬼の面をつけて踊ります。
肥前浜宿花と酒まつりは、肥前浜宿の特産品であるお酒に関するお祭りです。鹿島市の地酒や美味しい食事を味わいながら、面浮立も楽しんでください。
浜祇園祭り (7月)
鹿島市浜町の「祇園さん」として知られる松岡神社の例祭です。松岡神社から若宮神社まで御輿(みこし)が出発し、獅子舞や面浮立、提灯行列などがお供をします。
白壁の昔ながらの建物が立ち並ぶ肥前浜宿の酒蔵通りでも面浮立は披露されます。酒蔵通りは肥前浜駅から徒歩で約6分なので、車がなくても行きやすい距離です。
山浦千灯篭 (8月頃)
鹿島市の能古見(のごみ)地区にある山浦天満宮で行われる夏祭りです。
車がないと行くのは難しい場所ですが、比較的空いているので撮影はしやすいです。
田畑や緑の山々が広がる自然豊かな場所で面浮立が披露されることが特徴です。
かしま伝承芸能フェスティバル (9月)
毎年9月に祐徳稲荷神社で行われる伝承芸能の祭典です。市内外に伝わる様々な伝承芸能が披露され、その中には面浮立もあります。
境内に設置されたステージの上で、神社の本殿を背景に踊ります。
場所は祐徳稲荷神社なので交通アクセスが良く、面浮立以外にも様々な伝承芸能を一度に見られることもあり、毎年多くの見学者が訪れます。
七浦秋祭り (9月)
面浮立が多く分布する鹿島市の七浦(ななうら)地区で行われる秋祭りです。戸口神社、鎮守神社、天子神社という3つの神社で、同じ日に面浮立が披露されます。3つの神社は比較的近い距離にありますが、面浮立が披露される時間も近いので、上手くまわらないと全ての面浮立を見るのは難しいです。
上の写真は、天子神社で披露される音成面浮立です。佐賀県の重要無形民俗文化財に指定されている面浮立です。音成の面浮立は踊りに余興的要素が少なく、衣装も派手さのないシンプルなことが特徴です。七浦秋祭りでは、音成公民館の前にある広場、天子神社に向かう農道、天子神社の境内で面浮立が行われます。
こちらは、音成面浮立と同じく重要無形民俗文化財に指定されている鎮守神社の母ヶ浦面浮立です。
鎮守神社前の広大な田園風景の中で面浮立が練り歩きます。絶好の撮影スポットであることから、大勢のカメラマンが訪れます。神社の境内でも面浮立は披露されます。
七浦秋祭りで披露される面浮立の3つ目は、戸口神社の飯田面浮立です。朝早い時間帯から、戸口神社近くの長い農道で笛や面浮立の行列が歩きます。ここも田んぼが広がる景色の良い場所なので、早朝からカメラマンが集まります。戸口神社近くの農道および神社の境内で面浮立が披露されます。
救世神社秋祭り (9月)
救世神社で行われる秋祭りでは、市の重要無形民俗文化財に指定されている「浅浦面浮立」が披露されます。救世神社秋祭りの特徴として、真っ赤な彼岸花が咲く土手の上で行われ、面浮立と彼岸花の美しいコラボは見ごたえがあります。場所は上浅浦という地域の溜め池で行われますが、車がないと行くのは難しいです。
琴路神社秋祭り (11月)
秋に行われる琴路神社の例大祭です。琴路神社の境内などで、面浮立、獅子舞、剣使い、鉦(かね)浮立、一声(いっせい)浮立などの伝承芸能が披露されます。
琴路神社はバスや車であれば肥前鹿島駅からすぐの場所にあるので、面浮立を見られるイベントの中では比較的行きやすいでしょう。
浮立面の制作と購入
面浮立の踊り手がかぶる鬼の面は「浮立面(ふりゅうめん)」と呼ばれています。踊りのときにかぶるだけではなく、魔除けとして家の中に飾られていることもあります。
浮立面は地元の木彫師が制作しています。鹿島市では「杉彫(すぎちょう)」と「中原恵峰(けいほう)工房」で制作しています。魔除けや記念品のお土産として買われることもあり、杉彫、中原恵峰工房、祐徳稲荷神社門前商店街、観光物産センターで販売しています。
終わりに
面浮立は地域のお祭りで神社に奉納される神事でありながら、多くの人が撮影や見学に訪れるほど魅力があります。鬼の面をつけた勇ましい踊りと、太鼓や鉦の心地よい音で構成される面浮立には独特の雰囲気があり、初めて見る人はきっと引き込まれることでしょう。ぜひ一度、鹿島市の面浮立を見に行ってみてください。