佐賀県の鹿島市にある「肥前浜宿(ひぜんはましゅく)」は、歴史的な町並みが残り、古くから酒造りが行われてきた地域です。この記事では、実際に肥前浜宿に住んでいる地元民が、肥前浜宿がどのような場所なのか、観光をする際の見所や楽しみ方を紹介します。
肥前浜宿とは
肥前浜宿は古い歴史を持った地域で、主に「酒蔵(さかぐら)通り」と「茅葺(かやぶき)の町並み」で構成されています。この2つは2006年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に同時に選定され、歴史的に価値の高い地域として認められています。
酒蔵通り
江戸時代から昭和時代にかけて酒や醤油などの醸造業を中心に発展した地域です。600メートルほどの通りには、白壁の建物や大型の酒蔵、武家屋敷などが立ち並び、通称「酒蔵通り」と呼ばれています。
茅葺の町並み
有明海に近く、漁業で栄えた漁村集落です。伝統的な茅葺屋根の民家が現在も残り、昔ながらの風景が特徴です。
肥前浜宿の交通アクセスと周辺観光
肥前浜宿の酒蔵通りは、最寄り駅の肥前浜駅から徒歩で約6分。肥前浜駅の前の道を直進すれば酒蔵通りに到着するので、車がなくても行きやすい場所です。
2018年に新しくリニューアルした肥前浜駅には観光案内所があるので、肥前浜宿のパンフレットを手に入れたり、レンタサイクルを借りることもできます。肥前浜宿の周辺にはロッカーがないので、大きな荷物がある場合はこの観光案内所にて荷物を無料でお預かりしています。
自家用車で行く場合は、大型バスも含めて無料で止められる「肥前浜宿まちなみ駐車場(上の写真)」があります。峰松酒造場という酒蔵の近くにあり、ここから酒蔵通りと茅葺の町並みまでは徒歩すぐです。
また、周辺観光としては祐徳稲荷神社から車で約6分と非常に近い距離にあり、鹿島市に旅行するなら両方行かないともったいないです。祐徳稲荷神社と肥前浜宿の間はバスも運行しています。
酒蔵通りの楽しみ方
ここからは、酒蔵通りと茅葺の町並みのそれぞれについて、楽しみ方や見所などを紹介していきます。
地酒の試飲と購入
肥前浜宿の一番の特産品は地酒です。多くの観光客が地酒を楽しみに酒蔵通りを訪れます。鹿島市は、多良岳山系の豊富な水、佐賀・白石平野の米、長崎へ販売するための有明海の海運ルートなど条件に恵まれ、古くから酒造りが盛んでした。
戦前までは肥前浜宿で十数軒の酒蔵が酒造りをしていましたが、現在は、光武(みつたけ)酒造場、光武酒造場 峰松(みねまつ)蔵 観光酒蔵肥前屋、富久千代(ふくちよ)酒造という3つの酒蔵(2酒造会社)が酒造りをしています。また、酒蔵通りから徒歩15分ほどの場所には幸姫(さちひめ)酒造もあるため、徒歩で4つの酒蔵巡りができます。
この中で富久千代酒造は酒蔵でお酒の小売を行っていません。肥前屋(ひぜんや)という店名で営業している酒蔵通りの光武酒造場 峰松蔵(上の写真)では、光武酒造場のお酒を販売しています。
旅行のお土産にお酒を買うだけではなく、無料の試飲が観光客には人気です。
肥前屋では、日本酒、焼酎、果実酒、甘酒など約40種類を自由に飲み比べできます。
光武酒造場と肥前屋の他には、酒蔵通りにある中島(なかしま)酒造場と飯盛(いいもり)酒造でも地酒を購入できます。2011年の「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」の日本酒部門で世界一になった富久千代酒造の「鍋島」という銘柄は、飯盛酒造やありあけ酒店という酒屋で購入できることがあります。
酒蔵の見学
お酒を飲んで買うだけでは終わらないのが肥前浜宿のすごいところ。肥前屋では酒蔵の中を常時見学ができて、事前に予約をすれば酒造りについて話を聞くことも可能です。また、酒蔵通りから徒歩で15分ほどの幸姫酒造でも酒蔵見学はできます。
町並みや歴史を楽しむ
お酒を飲まない人でも酒蔵通りは楽しめます。酒蔵通りには江戸時代から昭和初期にかけての古い建物が立ち並び、国の登録有形文化財に登録されている建物が多いです。ノスタルジックな雰囲気の通りは歩いているだけでワクワクしてきます。細い通りに沿って白壁の建物が並ぶ様子は美しく、写真撮影も人気。一人で来て町並みをゆっくりと楽しむ観光客も多いです。
江戸時代の肥前浜宿は多良海道の宿場町として栄えていました。そして、宿場から宿場まで旅人の荷物や物資の輸送を行っていた継場(つぎば)という建物が酒蔵通りに残っています。
現在は肥前浜宿の観光案内所として利用されており、常駐する地元のガイドから肥前浜宿の歴史について話を聞けます。
酒蔵通りに来たら是非見てほしい建物が旧乗田家住宅(きゅうのりたけじゅうたく)です。ここは江戸時代の後期に建てられた2階建ての武家屋敷で、巨大な茅葺屋根が特徴です。中は広い土間や座敷で構成された昔ながらの民家です。
年配の方にとっては懐かしく、若い人や外国の観光客にとっては珍しいでしょう。旧乗田家住宅の中は無料で自由に見学できます。
茅葺の町並みの楽しみ方
これまでは肥前浜宿の酒蔵通りについて紹介してきましたが、そのすぐ近くには酒蔵通りと同じく重要伝統的建造物群保存地区に選定されている茅葺屋根の民家が密集する地域があります。
ここは商人や船乗りが住む港町として発展した地域です。茅葺の町並みの側を流れる浜川は有明海につながり、河口には海苔漁を行う船が多く並んでいます。
酒蔵通りとは大きく雰囲気が変わり、異なる町並みを一度に体験できることも肥前浜宿の魅力です。特に茅葺屋根の民家が3棟並ぶ場所は絶好の撮影スポットです。
町並みを眺めながら漁師町ならではの入り組んだ細い路地を歩き、その土地の人々の生活を肌で感じるのが茅葺の町並みの楽しみ方です。
肥前浜宿の食事・ランチ
肥前浜宿で食事をする場合は、肥前浜駅の目の前に「金時食堂」があります。ここは創業して約100年、地元の人から観光客まで多くの人に長く愛されてきた老舗です。皿うどんやかつ丼が人気のメニューで、夜には居酒屋として有明海の幸や地酒も楽しめます。
その他には、酒蔵通りに「浜宿キッチン」があります。お昼にはボリューム満点の洋食と和食のランチセットを食べられます。
肥前浜宿を散策して小腹がすいたら、うなぎはいかがでしょうか。茅葺の町並みのすぐ近くに「峰松うなぎ屋」という戦前から営業する老舗があります。事前に電話で予約をしておけば、炭火焼きした蒲焼をその場で食べられます。
GRAD COFFEEでは、甘酒ソフトクリームやナポリタンなどの軽食を提供しています。
肥前浜宿のお土産
肥前浜宿のお土産といえば、やはり地酒は外せません。酒蔵通りでは、肥前屋、中島酒造場、飯盛酒造にて地酒を購入できます。
肥前屋では、酒蔵がプロデュースして開発した酒蔵スイーツも人気です。上の写真は、光武酒造場の「魔界への誘い」という芋焼酎を贅沢に使ったケーキです。
他にも、純米酒を入れて煮込んだ酒蔵カレー、酒米を使用したせんべいなど、肥前浜宿らしいお酒に関連したお土産がたくさんあります。
地元の野菜や酒粕を使った漬物も肥前浜宿の名物です。日本酒をお土産として買ったら、そのおつまみとして漬物を一緒に買うのもおすすめです。肥前浜宿では漬蔵たぞうと飯盛酒造が自社製造の漬物を販売しています。
肥前浜宿の宿泊場所
肥前浜宿は佐賀県でも有数の酒処なので、お酒を飲める場所が多くあります。車で旅行に来てもお酒を飲んでそのまま泊まれるようなゲストハウスが肥前浜宿があります。
一つ目は、肥前浜駅から徒歩1分の場所にある「ゲストハウスまる」です。
築80年の古民家を活かしたゲストハウスで、部屋は個室と相部屋の2種類があります。
お昼には「まるCAFE」として美味しいドリンクやスイーツを提供しています。
肥前浜宿のイベント
肥前浜宿では年に数回、大きなイベントが開催されます。特にお酒のイベントは全国からお酒好きが集まり、大勢の来場者でにぎわいます。
ふな市 (1月)
全国的にも珍しい生きたフナを販売する市です。この地域で300年以上続く伝統行事で、多くのメディアやカメラマンが訪れます。
肥前浜宿花と酒まつり (3月頃)
肥前浜宿で最大のお酒の祭典です。肥前浜宿の酒蔵が合同で蔵開きを行い、お酒を飲めることはもちろん、酒蔵の中を見学したり、蔵人と会話をしたり、お酒好きにはたまらないイベントです。市内にある6つの酒蔵をシャトルバスで巡ってお酒を飲む「酒蔵ツーリズム」と同時に開催されます。
肥前浜宿土曜夜市 (8月頃)
土曜日の夜に酒蔵通りで開かれる夏祭りです。酒蔵通りに様々な屋台が立ち並び、音楽ライブや大道芸などで盛り上がります。
肥前浜宿秋の蔵々まつり (10月頃)
お酒や催しなど様々なものに「くらくら」するほど楽しむお祭りです。春の「肥前浜宿花と酒まつり」と同じく、お酒に関連したお店や催しが多くあります。
酒蔵通りdeはしご酒 (毎月第4土曜日)
毎月第4土曜日の夜には酒蔵通りで「はしご酒」を開催しています。この日は酒蔵通り沿いにある複数のお店が同時に営業を行います。個性のあるお店を順番に巡り、それぞれのお店の雰囲気、料理、お酒を味わい、人との出会いを楽しむイベントです。
肥前浜宿をさらに楽しむために
肥前浜宿ではガイドを利用できます。地元在住のガイドが酒蔵通りや茅葺の町並みを一緒にまわり、肥前浜宿の歴史、建物、お酒などについて説明します。ガイドを利用することで理解が深まり、旅行がさらに楽しくなるはずです。
終わりに
この記事では肥前浜宿の見所や楽しみ方について概要を紹介してきました。酒蔵通りと茅葺の町並みで構成される肥前浜宿では、「歴史的な風景」や「お酒」を存分に楽しめます。近年は海外からの観光客も多く訪れ、国内外から注目されている場所です。肥前浜宿について気になった方は、他の詳細ページもご確認ください。